《エシカル消費》人・社会・環境に配慮し行動
SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた手段の一つとして、「エシカル消費」が広がりつつある。人や社会、環境に配慮した消費行動を指すエシカル消費は、目標12の「つくる責任 つかう責任」と関連が深い。家庭科教育を研究する茨城大学教育学部の石島恵美子准教授は「買い物は投票と同じ。消費者として責任を持って商品を選んで」と呼び掛ける。
エシカル消費は、「使うこと」と「買うこと」の二つの側面がある。まず、使うことは、限りある資源を使って作られた商品や天然資源を大切に使用することだ。
もう一つは、「倫理的に考えて正しいかどうか」を基準に商品を買うこと。自分が商品を手に取るまでの「生産や流通の過程」や「値段の背景」を考え、本当に必要な分を購入することが大切だ。石島准教授は「『安さ』だけで選ぶと、その商品が人や社会、環境への配慮が足りずに作られていることがある」と指摘。「行政、企業、消費者がそれぞれの立場でSDGsの達成を視野に入れて行動することが重要」と強調する。消費者にとってエシカル消費は、丁寧な生活を心掛けることにつながる。
エシカル消費のキーワードは、「フェアトレード(公正取引)」「地産地消」「応援消費」「寄付付き商品」「リサイクル」「脱プラスチック」などがある。これらの商品を選択することが、社会課題の解決に結び付く。商品選びに迷ったときは認証ラベルを参考にしよう。
環境問題の解決には、大量生産・大量消費・大量廃棄の生活を見直したい。「リデュース(削減)、リユース(再利用)、リサイクル(再資源化)」の3Rの中で特に重要なのは「削減」だ。「物を買うことに慎重になってほしい」と石島准教授。最近は、自動車や洋服などのレンタルができる定額制サービス「サブスクリプション」やフリーマーケットなどが注目を集める。マイバッグや詰め替え容器の利用は資源を無駄遣いせず、ごみの減量にも有効だ。
まだ食べられる食材を廃棄してしまう「食品ロス」の削減も意識したい。店で商品棚の手前にある商品を選ぶ「てまえどり」を心掛けると、販売店の食品ロス削減が期待できる。賞味期限は「おいしく食べることができる期限」と正しく理解して判断しよう。県内では、小盛りが選べるメニューの工夫や持ち帰り容器を常備するなどの「食べきり運動」を推進する飲食店も増えている。
エシカル消費を継続するポイントは、互いの活動を分かち合い、みんなで取り組むこと。石島准教授は「おいしく、楽しく、できることから続けることが大切。一人一人の消費行動が地球の未来を変えることに自信を持ってほしい」と助言した。
認証ラベル・マークの一例
エシカルいばらき
エシカル消費をより多くの人に知ってもらおうと、県は昨年度からホームページやイベントを通じた普及啓発に取り組んでいる。
ホームページでは、基礎知識や県内の事例を紹介。クイズに答えると規格外野菜などが抽選で当たる「エシカル度チェックキャンペーン」を実施中だ。県の委託でホームページの運営などを担う県消費者団体連絡会の根本浩昌事務局長は「エシカル消費は知らなくても、地産地消など既に実践している人は多い。SDGs達成の手段として認知度を高めたい」と話す。
2022年6月17日掲載